姉は15歳、弟は8歳だった。両親を亡くしていた。ごった返す列車の中で弟は履いていた靴をなくしてしまった。姉は弟を叱責(しっせき)する。「靴をなくすなんて、何てばかなの」 ▼列車の向かう先はアウシュビッツ強制収容所。それが弟と交わした最後の言葉になった。辛うじて生き延びた姉は戦後、強い後悔の念に駆...
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